不登校の息子との葛藤から心理セラピストへ 親子関係の気づきが起業の原点  親子関係専門心理セラピスト 下元深登梨

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息子の不登校と自分の幼少期体験から始まった、心理セラピストへの道

私は現在、親子関係専門の心理セラピストとして活動しています。不登校のお子さんへのセラピーに加えて、親との関係性にも焦点を当てたセッションを行っています。私がこの道を選んだきっかけは、今年18歳になった息子が不登校になったことでした。

でも、もっと遡れば、私自身の幼少期の体験が、この起業に大きく関わっています。

私には年子の妹がいて、母は妹の育児に追われていました。そのため、私は祖母に預けられて育てられることになります。当時は、それが当たり前だと思っていました。祖母は、戦時中にひとりで四人の子どもを育てた人で、しつけにはとても厳しい人でした。

でも、不思議と私は祖母に対して悪い印象を持っていなかったんですね。

むしろ、母や父に反発心を抱き、祖母こそが私を守ってくれる味方だと思い込んでいました。それが思い込みだと気づいたのは、私自身が子育てをするようになってからです。ある時、妹にこう言われたんです。

「子どもへの叱り方がおばあちゃんそのものだよ」

そこで初めて、祖母から受けた厳しいしつけの記憶が蘇ってきました。髪を引っ張られて家中引きずり回されたこと、叩かれたこと、お灸の痕がいまだに体に残っていること。今まで封印していた記憶が、次々に浮かび上がってきたんです。

息子が中学生になり、不登校の兆しが見え始めた頃、私は公務員として中間管理職のような立場にいて、仕事に追われる日々を送っていました。

当時の私は、「学校に行ってくれないと私が困る」「仕事に行けなくなる」と、自分の都合ばかり考えていて、子どもの気持ちに寄り添うことは全くしていませんでした。ただ、学校に行かせることだけを必死に考えていたんです。

朝から息子を部屋から引っ張り出して、車に押し込むようなことを半年ほど続けていました。でも、無理に学校に行かせようとするほど、息子の状態は悪化していったんです。

「学校」という言葉を聞いただけでお腹を抱えてトイレにこもり、ひどい時は気絶することもありました。そうまでしても、私は「動けるなら学校へ行きなさい」という態度を崩さなかった。今思えば、とてもひどい親だったと思います。

そんなある日、転機が訪れます。

コロナのワクチン接種を終えて帰宅すると、家にいるはずの息子がいませんでした。そして、テーブルの上に置かれていたのは、

「ぼくはお母さんにとって、いてはいけない子だから、いなくなる」

という置き手紙でした。あの時の衝撃は今でも忘れられません。

本当に命を絶つのではないかと、必死で探し回り、なんとか見つけることができました。その時、初めて「これはもう、なんとかしなければいけない」と心から思ったんです。

不登校は子どもだけの問題じゃなく、私自身にも原因があるのだと、ようやく気づいた瞬間でした。それから、私はインターネットで心理カウンセラーを探し、話を聞いてもらうことにしました。そのカウンセラーの先生がかけてくださった言葉には、とても強い説得力がありました。

ですので、思い切ってセラピーを受けることに決めたんです。

すると、不思議なことに、私自身がどんどん変わっていきました。セラピーを始めて3か月ほど経った頃、息子にも変化が表れました。

あれほど悩まされていたゲームの課金が、ピタリと止まったんです。それまでは私のクレジットカードを無断で使い続け、番号を覚えているため、隠しても意味がなく、ひどい時は課金の金額が7ケタに達することもありました。

でも、その課金が止まった。

これは本当に大きな変化でした。同時に、私自身も公務員という組織の中で働くことに対して、強い違和感を覚えるようになりました。長年勤めてきたのに、どこか無意識に自分を抑え込んでいる生き方に疑問を持ち始めていたんですね。

同僚が心を病んだり、自死を選んでしまうことがあり、組織そのものが人を追い詰める構造になっているのではないかと思うようになりました。

「私はもっと自由に、自分らしく働きたい」

そう感じるようになり、起業を決意しました。セラピーを続ける中で気づいたのは、息子との関係だけでなく、私自身の生き方や考え方が、幼少期から受けてきた影響に大きく左右されていたということです。

その一つが、お金に対する考え方でした。私の叔父、父の弟にあたる人は借金を抱えて逃げ回っていた人でした。子どもの頃、借金取りから電話がかかってきて、ドスのきいた声で叔父の居場所を聞かれるという、怖い体験をしたんです。

その時の記憶が、「絶対に借金はしてはいけない」「お金は常に貯めておかなくては」という強い固定観念となり、私の中に根付いていきました。

実際、私がすべて返済した元夫の1500万円の借金の問題も、そして、息子のゲーム課金の問題も、私の中にあったお金に対する無意識のトラウマが影響していたことが、セラピーを通じて明らかになったんです。そのトラウマを解消したことで、息子の課金行動がパタリと止まったのは、本当に驚きでした。

セラピーを学び始めて半年ほど経った頃、息子は少しずつ元気を取り戻していきました。

リビングに出てきて、一緒にテレビを見たり、ぽつぽつと話をしてくれるようになったんです。

親が変われば、子どもも変わる。

私はそのことを、身をもって体験しました。

親子関係を改善し、理想の未来を掴む心理セラピーとコーチングの融合プログラム

私が行っているのは、親子関係を改善しながら、理想の未来を自分の手で掴むための心理セラピーです。

ただ子育ての悩みを解消するだけではありません。クライアントご自身がまず、自分の心と丁寧に向き合い、癒し、安心感という揺るがない土台を築いていくことを大切にしています。そのうえで、行動する力、自分を信じて進んでいく自己効力感を高めるために、コーチングの要素も取り入れたプログラムをご提供しています。

私がここまで親子関係にこだわるのは、人間関係の悩みの根っこに、必ずと言っていいほど親子関係が関わっているからです。恋愛でも、職場でも、友人関係でも、深く掘り下げていくと、最終的にたどり着くのは、親との関係なんです。

だからこそ、そこを整えることがとても重要だと感じています。今、私のもとに来られるクライアントの多くは、不登校のお子さんを持つお母さんたちです。

でも、それだけではありません。

「自分が毒親になってしまうのでは」と悩む方、自分自身が毒親育ちだったと気づいた方、介護をきっかけに「実は親を深く憎んでいた」と向き合う方もいらっしゃいます。介護という、親と長い時間を共に過ごす状況の中で、今まで抑え込んでいた感情があふれ出してくる――そんなケースも、本当に多いんです。

最初は癒しだけを提供するセラピーを行っていました。でも、起業してから、まるでアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような感覚に悩まされました。

前に進みたいのに進めない、自分の中にある何かが邪魔をしている。そんなもどかしさがずっとあったんです。

2025年の2月、ようやくその見えない殻が破れた感覚がありました。「目立ってはいけない」「前に出てはいけない」という無意識に自分を縛っていた制限が、自分の中にあったことに気づいたんです。

また、癒しの心地よさに浸りすぎると、行動するエネルギーが鈍ってしまう。

そこに気づいた私は、セラピーとコーチングを組み合わせた独自のプログラムを作り上げました。今では、クライアントが自分自身の力で前に進み、自立を目指すためのサポートを行っています。

「現実の創造主は自分」――信じる力で人は変われるという想い

私が一番お伝えしたいのは、「現実の創造主は自分である」ということです。

セラピーの先生にアカウンタビリティという言葉を教えてもらったことがあります。アカウンタビリティは、日本語にすると、自己責任と訳されがちですが、本来はもっと前向きな意味を持っている言葉なんです。

今、自分の目の前にある現実は、自分が選び、作り出してきたもの。だからこそ、未来も自分次第でどうにでも変えていける。

そんな希望を持てる言葉なんです。

そして、私が大切にしている信念のひとつが「信は力なり」という言葉です。

1980年代のドラマ『スクール☆ウォーズ』に出てくるフレーズで、どんな子どもでも信じ抜いて育てる顧問の先生の姿に、強く心を打たれました。

今、私がクライアントさんに向き合う時も、常に100%信じるという姿勢を貫いています。

私が目指しているのは、単に問題を解決するだけではありません。クライアントさんが、自分自身の本質に還り、自分らしさを取り戻していく。そのプロセスに寄り添うことを大切にしています。

表面的なテクニックではなく、本質的な変化を求めている方にこそ、私のセラピーを届けたい。そして、その方が自分らしく輝き始めた時、その周囲にも変化が波及し、家族や社会全体が少しずつ優しくなっていく。

そんな循環を作りたいと心から思っています。

息子の不登校と向き合い気づいたこと、親子で流した涙が教えてくれたこと

私にとって、一番の大きな課題は、やはり息子の不登校でした。あの時、私は「なんとかしなければ」という焦りと、「私の子だから大丈夫」という根拠のない過信、その両方に支配されていたと思います。

今振り返ると、まさに支配的な思考に陥っていました。でも、心理セラピーを学び、実践していくうちに、少しずつ価値観が変わっていきました。以前は白か黒か、正しいか間違いか、すぐに答えを決めたがる性格でしたが、今ではグレーゾーンを受け入れられるようになりました。

○か×かで判断せず、その間にある多様な価値観を認められるようになった時、私の心は本当に軽くなったんです。

心理セラピーを実践して良かったと最も実感したのは、引きこもりがちだった息子が、自分の気持ちを素直に話してくれた瞬間でした。

あの時、私たちは親子でボロボロ泣きました。

「よく話してくれたね」

そう伝えた時の、息子の表情は一生忘れません。

そして、クライアントの方々から「家族との関係が劇的に変わりました」「人生が明るくなりました」と言っていただくたびに、この仕事の意義を深く実感しています。

親が変われば子どもも変わる。その連鎖が家族、社会へと広がっていく。

その広がりを信じて、私は今もこの道を進んでいます。

親子関係から社会を変える

私の願いは、親子関係に悩む人が少しでも減り、互いを思いやる社会が広がることです。力で相手をねじ伏せるのではなく、対話で解決する。そんな社会を作っていきたいと願っています。

日本は本来、争いごとを避け、対話を大切にする文化を持っています。だからこそ、日本から対話の価値を世界に広げていけると信じています。少し大きな夢かもしれませんが、本気でそう思っているんです。

また、公務員時代の経験を活かし、ストレスを抱える公務員のメンタルケアにも力を入れていきたいと思っています。私が認定講師を務めるマインドハグ協会では、教育現場や医療現場といったストレスの多い職場への訪問支援も行っています。

これをもっと広げて、公務員の方々にも届けたい。公務員のメンタルが整えば、国にも良い影響があるはずです。

一人ひとりの心が癒され、前を向けるようになれば、社会全体も優しくなる。

その確信が私にはあります。

自分の直感を信じて生きる

最後に、私が一番伝えたいのは「自分の直感を信じてほしい」ということです。人間の意識はわずか4%が顕在意識で、残りの96%は無意識だと言われています。この無意識が、変わろうとする時にブレーキをかけてくる。

でも、一瞬のひらめきや直感は、その無意識と顕在意識が一致した時に生まれるものなんです。

だから、その直感を大事にしてほしい。もちろん、起業には覚悟が必要です。

「簡単に稼げる」「すぐに成功する」なんて甘い話はありません。でも、自分の人生を自分で作る視点に立てば、どんな選択も怖くなくなります。最終的には、やりたいからやるという気持ちが大切。

私も2025年2月に自分の無意識の制限から解放されて以来、「want to」で動くようになり、そこから流れがガラッと変わりました。

自分に正直に、強く信じる気持ちを持って、一歩を踏み出してみてください。その一歩が、あなた自身の人生を変え、周りにも勇気を与えてくれる。そして、その波が、思いやりのある社会を作っていくと、私は信じています。

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